抄録
唇顎口蓋裂に対して, いろいろな手術的治療法がなされているが, 唇顎口蓋形成術術後, 外鼻変形, 鼻閉を生じることが少なくない.その原因として披裂の程度, 外鼻や顎の発育, 解剖学的問題があるのではないかと考え唇顎口蓋裂患者に対し術前にcomputed tomography撮影を行った.〈対象, 方法〉対象は, 唇顎口蓋裂患者36名, 生後平均128日である.36名を裂型別に4群に分類した.両側唇顎口蓋裂5名, 片側唇顎口蓋裂13名, 片側不全唇裂, 口蓋裂合併群7名, 片側不全唇裂のみ11名である.フランクフルト平面に平行にスライス幅5mmで単純CT撮影を行い, 鼻偏位, 鼻腔面積, 鼻中隔の形態, 彎曲度を計測した.〈結果〉鼻偏位の方向はすべて健側であり, 鼻腔面積は裂側がすべて狭くなっていた.鼻中隔の形態は, 右側に裂があるものはS字状彎曲, 左側に裂があるものは逆S字状彎曲であった.又, 口蓋裂の有無により鼻偏位度, 鼻腔面積, 鼻中隔の彎曲度は, 裂型別に有意の差が認められた.このことから, 唇顎口蓋形成術術後の外鼻変形, 鼻閉の原因の一つとして解剖学的変形が考えられる.