昭和医学会雑誌
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ラット急性肝障害後の修復過程におけるGap Junctionの検討
―共焦点レーザー顕微鏡を用いた免疫組織学的検討―
梅田 知幸米山 啓一郎橘 とも子八田 善夫
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1992 年 52 巻 2 号 p. 190-196

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抄録
Galactosamineラット急性肝障害の肝修復過程におけるgap junction (以下G.J.) の変化をラットgap junction monoclonal ab (connexin 32 ab) で免疫組織化学的に検討し, DNA合成の変化と比較した.7週齢Wistar系雄性ラットにgalactosamine 300mg/kgを腹腔内投与した.投与前, 24, 48, 72, 96, 168時間後の肝組織をconnexin 32 abとFITC標識第2抗体を反応させ共焦点レーザー顕微鏡で観察した.肝組織0.1mm2あたりの螢光スポットを正常な糸状ギャップ結合蛋白 (S type) , 障害時の球状ギャップ結合蛋白 (L type) とに分けて測定した.DNA合成はBrdUで標識後, 抗BrdU抗体を用いて染色しG.J.の検討と同様な視野で測定した.その結果, 1) 正常肝細胞のG.J.は肝細胞接着面にS typeのスポットとして観察された.2) 急性肝障害時のG.J.の観察では, 細胞障害が高度な24, 48時間では細胞接着面には螢光スポットがほとんどみられず, 細胞質内に球状や塊状の形で主にL typeが多く観察された.3) 修復過程についてS typeとL typeに分け検討するとS typeは投与前 (1817±316/0.1mm2) , 24-72時間後と著明に減少し96時間後, 168時間後と増加していたが, 正常の螢光スポット数には完全には回復しなかった.L typeは前 (44±33/0.1mm2) , 24-96時間後 (426±240/0.1mm2) と増加していたが168時間後にはやや減少していた.4) 肝細胞のBrdU L.I.は前に比べ96時間後がピークとなり, 168時間後は低下していた.以上よりgalactosamineを用いたラット急性肝障害時の変化は, 正常なS typeの消失とL typeの細胞質内への出現が特徴的であった.修復過程においてはDNA合成がピークとなる96時間後にも, まだL typeが高値で, S typeも前値の2/3程度しか回復していなかった.これは既に報告されている部分肝切除後のG.J.の修復過程とは異なっており両者の再生の違いを考える上で興味深いと思われる.
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