抄録
総胆管結石症に対する内視鏡的乳頭括約筋切開術 (Endoscopic sphincterotomy; EST) の有用性を明らかにする目的で, 主たる結石除去術がバスケットカテーテル法のみであった1985年までの前期と, 機械的砕石具や経口胆道鏡下での電気水圧衝撃波法, レーザー照射法による砕石処置, あるいはドレナージ処置が経乳頭的に可能となった1986年以降の後期に別けて, 截石成功率, 早期合併症および中長期的予後について臨床的検討を行った.対象は1975年11月から1985年までの前期465例, 1986年以降1992年5月までの後期202例, 計667例の総胆管結石症である.截石成功率は前期の92.5%から後期では95.5%に向上し, 全体では93.4%であった.合併症の発生頻度は前期6.9% (内要手術例1.7%) から後期には3.5% (同0.5%) と半減し, 全体では5.8% (同1.3%) であった.重篤な合併症による死亡率は前期0.6%, 後期0%, 計0.4%であった.予後に関してはEST施行後4~9年間中期的に追跡調査が可能であった110例中5例 (6.2%) に結石の再発が認められた.胆嚢炎は有胆嚢結石症26例中2例 (7.7%) に発生したが, 無石例では皆無であった.10年以上の長期間追跡調査が可能であった46例では結石再発が6例 (13.0%) に, 胆嚢炎が有胆嚢結石症の2例 (4.3%) に認められた.ESTは内視鏡および処置具の発展と技術の向上により, より安全で確実な截石術へと進歩した.さらに中長期的な追跡調査の結果から, 当初危惧されたほど結石再発率, 胆道感染症発生率は高くなく, ESTは総胆管結石症に対する極めて有用な治療手段であると考えられた.