昭和医学会雑誌
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胃癌患者における血中c-erbB-2蛋白濃度
―臨床病理学的因子, 組織発現, およびDNA ploidy patternとの関連―
茂木 好則河村 正敏新井 一成福地 邦彦高木 康
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1993 年 53 巻 3 号 p. 247-253

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抄録

癌遺伝子の1つであるc-erbB-2の遺伝子産物の血中濃度を胃癌患者血清を用いて測定し, 組織でのc-erbB-2の発現, 組織でのDNA ploidy patternとの関係について検討した.外科摘出術前の患者56例の血中c-erbB-2濃度は, 胃癌ステージの進行とともに高値となる傾向にあり, 健常人カットオフ値の10U/ml以上の症例14例のうち, 12例は進行癌であり, 未分化型が分化型より高率であった.組織でのc-erbB-2遺伝子産物の発現は, 22例中8例に認められ, 発現例の血中c.erbB-2濃度が11.83±6.06U/mlであったのに対して, 非発現例では7.23±2.66U/mlと有意の差が認められ, 組織での発現を血中c-erbB-2濃度測定によりモニターできる可能性が示唆された.また, DNA ploidy patternの検索では, diploidyが7.18±1.39U/mlであったのに対して, aneuploidyは9.92±5.90U/mlと高値傾向であり, 大きなバラツキが認められた.悪性腫瘍におけるaneuploidyは予後不良とされており, 血中c-erbB-2濃度が高値の症例では癌遺伝子が高率に発現していることが示唆され, 胃癌の予後を推定する指標の1つとして, 血中c-erbB-2濃度測定は有用であると思われた.

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