昭和医学会雑誌
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肝肉芽腫性病変の臨床病理学的意義とその発生機序
―生検材料における病理組織学的および生物計測学的研究―
相澤 共樹諸星 利男
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1993 年 53 巻 3 号 p. 295-304

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抄録

肝にみられる肉芽腫性病変の形態や病因および実態を知るために, 当教室ならびに関連施設において過去15年間に経験された経皮的肝生検材料1100例を対象とし, 臨床病理学的および病理形態学的検索を行なった.肝肉芽腫を脂肪滴を有する脂肪性肉芽腫 (LG) と, これを欠く非脂肪性肉芽腫 (NLG) に大別し, さらにそれぞれを構成細胞により組織球型 (HLG, HNLG) と類上皮細胞型 (ELG, ENLG) に分類した.なおHNLGはvirus性活動性肝炎にみられる巣状壊死病変で代表されるが, 今回は検索の対象から除外した.肉芽腫は1100生検材料中, 69例 (6.3%) にみられた.内, LGは51例 (4.6%) , ENLGは18例 (1.7%) であり, 前者についての内訳はHLG優位症例, 36例 (3.3%) , ELG優位症例, 15例 (1.3%) であった.合併病変についてはLGはアルコール性肝障害, 過栄養性の脂肪肝症例に好発し, ENLGではPBCに好発した.LGは小葉内, 特に中心静脈周囲に, ENLGは門脈域内に好発した.LG症例は全例に肝脂肪変性がみられ, 肝脂肪変性の程度が強い程, LG発生個数が増加していることよりLGの発生に肝脂肪変性は不可欠な条件であると考えられた.また肝細胞壊死は必ずしも合併せず, LGは肝細胞外に滴出した脂肪滴に対する炎症反応であることが示唆された.なおELGはHLGに比較し, より大型でこれを構成する組織球の数も多く, 血清学的にもトランスアミナーゼ値が高値を示す傾向があるなどの点から, より活動的な組織反応と考えられた.一方, HNLGのいずれの型も肝実質壊死に続発した反応性病変であり, さらに複雑な組織像を呈するENLGは肝実質壊死に対する直接的反応のみではなく, 免疫反応も含めたより複雑な生体反応の一つと考えられた.

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