昭和医学会雑誌
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救急入院後早期死亡した90例についての病理学的検討
細田 周二浅沼 勝美諸星 利男神田 實喜男
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1995 年 55 巻 2 号 p. 133-144

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抄録
救急医学は総合医学的な側面を持つことから早期死亡例について病理解剖学的な立場より検討を加えた.研究対象は早期死亡例を入院後24時間以内に死亡した症例と規定し, 過去10年間 (1983~1993年) に松戸市立病院に救急外来を受診し緊急入院後, 早期死亡となった病理解剖症例より選び, 早期死亡例の救急病態の把握, また病理形態学的に検索しその原死因について検討した.急性心臓死が疑われた全ての症例, 主たる病変部に加えて少なくとも弁輪下3分の1の部位で水平割面に切り出し, 薄切標本を作製後H-E染色, Azan染色, PTAH染色, HIH染色を施し, 抗ミオグロビン抗体 (モノクロナール) を用いて免疫学的染色法 (SAB法) により検索した.また併せて電顕的検討も行った.早期死亡例すなわち対象例は90例 (男性53例, 女性37例) で, 平均年齢は58.3±16.9歳 (男性: 55.4±16.6歳女性: 62.3±16.5歳) であった.病院搬送時の救急病態は, 約半数弱が急性心不全39例 (43.3%) によるもので, 原死因別分類では, 循環器系疾患58例 (64.4%) , 呼吸器系疾患12例 (13.3%) , 脳疾患7例 (7.8%) , 消化器系疾患6例 (6.7%) , 腫瘍3例 (3.3%, その他4例 (4.4%) であった.早期死亡例の多くは循環器系疾患が全体の半数以上で, 心筋梗塞36例 (40.0%) , 心筋症9例 (10.0%) , その他の心筋病変8例 (8.9%) , 脈管系疾患が5例 (5.6%) であった.また心筋梗塞例では急性心筋梗塞14例, 陳旧性心筋梗塞に急性病変が加わった症例が22例であった.早期死亡例における虚血性心疾患は, 病変の範囲か広範囲なことか特俶附で, 生ての症例で光顕的に左室壁の貫壁性あるいは3分の1以上に及ぶ内膜下虚血性心筋病変が広い範囲で観察された.早期 (24時間以内) の急性心筋梗塞巣には凝固壊死および横紋の強い過収縮を伴う収縮帯壊死 (以下CBN) として確認され, その周囲には心筋の水腫変性が見られた.凝固壊死やCBN巣は免疫組織学的にミオグロビンの完全欠落がみられた.電顕的に梗塞巣周辺の病変のない部位の心筋細胞でも, 核クロマチンの核辺縁部集積, グリコーゲン顆粒の消失, 糸粒体のマトリックスの膨化やクリステの配列の乱れ, 極軽度な筋原線維の過収縮や過伸展が観察された.心筋梗塞36例についての入院後経過時間と組織学的想定発症経過時間の関係は, ほとんどの症例が救急病態発症より相当以前に心病変が発症していたと組織学的に想定された.なお散在性に心筋層全体に広がって存在するCBNを伴う微小病変も散見されるが, これらの症例については, いずれも終末期に心原性ショックの関与の可能性が示唆された.すなわち少なくとも多発性のCBNを伴う微小病変を急性心筋梗塞の早期像であると診断するには注意を要すると考えられた.本研究において形態学的に早期死亡例の多くは虚血性心疾患によるものであったが, 加えて心原性ショックが関与している症例も少なくないことが裏ずけられた.
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