昭和医学会雑誌
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正貌顔面規格写真を用いた日本人成人下顎形態の計測学的研究
―下顎角部突出について―
蓮見 俊彰
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1996 年 56 巻 3 号 p. 273-287

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抄録

下顎角部突出症 (いわゆるえらが張っている状態) は東洋人に多く, 下顎骨の変形および咬筋肥大が原因であるが, その評価は主観的な部分が大きく現在までのところ診断基準が定まっていない.そこで下顎角部突出症を客観的, 数量的に評価することを目的に, 日本人成分男女169人 (男性80人, 女性89人) の正貌顔面規格写真を撮影し, 5人の第三者によるアンケート調査を行い男性10人 (12.5%) , 12顎 (7.5%) , 女性14人 (15.73%) , 18顎 (10.11%) の下顎角部突出者を選出した.対照として男女各15人の正常者を選出し計54人の正貌顔面規格写真をパーソナルコンピューターに取り込み, 独自の方法にて写真上に15の基準点を設け正貌顔面規格写真上での下顎角部最突出点を規定した.これらの基準点をもとにコンピューターソフトを用いて18項目の基準点間の距離13項目の距離の比, 11項目の角度を計測し, 男性対女性, 下顎角部突出者対非突出者等につき危険率5%で比較検定を施行した.また, 得られた平均値をもとに各群の投射図を作成し, おもに下顎角部最突出点の位置的相違, 顔面下1/2の下顎輪郭の相違について考察し, 以下の結果を得た. (1) 男女差として顔面下1/2において女性の顔面は男性より全体的に小さく, やや横長で下顎角部を中心として下方に膨らみが強いが, それ以外は基本的にほぼ同じ形態であった. (2) 男性では下顎角部非突出者に比べて下顎角部突出者は, 下顎角部最突出点が外下方特に外側よりに位置しており, さらに顔面下1/2が縦方向に短く横方向に長いやや扁平な形をしている.すなわち, 下顎角部の変形のみならず顔面形態そのものにも違いが認められた. (3) 女性では下顎角部突出者の下顎角部最突出点は男性と同様下顎角部非突出者に比して外下方特に外側よりに位置しており, 顔面下1/2の形態は男性の場合と違って下顎角部非突出者, 下顎角部突出者間に差はなかった.

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