昭和医学会雑誌
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前立腺肥大症の組織学的構築とホルモン環境との関連性について
門脇 昭一北村 朋之笠原 敏男冨士 幸蔵斉藤 豊彦吉田 英機
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1996 年 56 巻 4 号 p. 423-433

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抄録
前立腺肥大症16例における組織学的構築と前立腺肥大症の発生および増殖に関係するとされている種々のホルモンの末梢血中濃度との関係について検討し, 加えて10例にchlormadinone acetate (CMA) を投与し, 投与前後の組織構築変化とホルモン濃度変化との関係についても検討した.前立腺体積は経直腸的前立腺超音波検査により求め, 前立腺組織は経直腸的前立腺針生検または経尿道的前立腺切除術により採取した.ホルモンは末梢血中のIuteinizing hormone (LH) , follicle stimulating hormone (FSH) , prolactin (PRL) , testosterone (T) , estradio1-17β (E2) 濃度を測定し肥大症前立腺の組織構築をmorphometryを用いて検索し比較検討を行った.各組織構成成分比率では, 腺管成分が35.0%であるのに対し, 間質成分は65.0%と間質優位であった.末悄血中のLH, FSH, PRL, T, E2濃度と間質成分とを比較したところ有意な相関は認められなかった.しかし相関係数ではTと間質成分vol.%とがr=0.435 (p=0.092) とその傾向が見られたため, E2を変化させずTを低下させるといわれているCMAを投与し, その前後で各構成成分比率および体積を比較した.その結果T濃度は5.5±2.4ng/mlから1.7±0.9ng/mlと有意に減少し, 平均前立腺体積も43.3±19.8cm3から35.5±15.1cm3と有意に減少したが, 各構成成分比率では有意な変化は認められなかった.このことから肥大症形成時には重量の増加と間質成分vol.%の増加が認められ, これにはTが関与しているといわれているが, 一旦完成された肥大症が縮小していく過程においては, 肥大症発生時とは異なったテストステロン作用機序が存在するのではないかと推察された.
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