抄録
1984年から1993年までの最近10年間に昭和大学病院および昭和大学藤が丘病院泌尿器科で経験した腎細胞癌189症例を対象に臨床的に検討した.Stage Iが122例, stage IIが17例, stage IIIが13例, stage IVが37例で, 189症例全体の疾患特異5年生存率は71%であった, Stage別にみると, stage Iが91.7%, stage IIが90.0%, stage IIIが52.0%, stage IVが6.6%であった.また, 189例中93例 (49.2%) が偶発癌であった.偶発癌は75.3%が院内外からの紹介患者で, 96.7%がCT, USで発見されていた.偶発癌は79.6%がstage Iであり, 5年生存率は88.9%と, 臨床癌の55.8%と有意な差を示した.最近, CT, USなどの画像診断機器の普及により, 偶発癌として発見される腎細胞癌が多くなっている.偶発癌は院内の他科や, 周辺の病院から紹介される症例が多いことから, 腎癌治療成績の向上にはこれらの施設との連携が重要であると思われる.