昭和医学会雑誌
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HCV-Genotype 1b/II型のC型慢性肝炎におけるInterferonの治療効果
―NS 5A領域の遺伝子構造との関連―
馬場 俊之石井 誠三田村 圭二米山 啓一郎
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キーワード: C型慢性肝炎
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1997 年 57 巻 2 号 p. 132-138

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抄録

C型肝炎ウイルス (HCV) の遺伝子型1b/II型 (HCV-genotype 1b/II型) のC型慢性肝炎において, HCV遺伝子のNS5A領域のC末端に支配されるアミノ酸配列2209-2248に変異が少ない症例では, interferon (IFN) の治療効果が低いと報告されている.昭和大学医学部第二内科にて組織学的及び分子遺伝学的にHCV-geno type 1b/II型のC型慢性肝炎と診断された22症例を対象に, NS5A領域のアミノ酸配列2209-2248をプロトタイプのHCV-Jと比較し, その変異数とIFN治療の効果との関連を検討した.アミノ酸の変異数により, 変異が認められないHcvをwild type, 変異数が1~3のHCVをintermediate type, 変異数が4以上のHCVをmutanttypeとした.IFN治療の効果判定は, 投与終了後6カ月の時点のalanine aminotransferase (ALT) と血中HCV-RNAの推移により, ALT正常, 血中HCV-RNA陰性であった症例を著効とし, その他の症例を無効とした.22例中, wild typeのHCV陽性例は13例, intermediate typeのHCV陽性例は6例, mutant typeのHCV陽性例は3例であった.それぞれの著効率は, wild type陽性例では13例中3例23.1%, intermediate type陽性例では6例中1例16.7%, mutant type陽性例では3例中2例66.7%であった.しかし, mutant type陽性例では著効率が高いものの, wild type陽性例, いわゆる変異を認めなくても著効の症例や, mutant type陽性例で変異数10にもかかわらず無効の症例が存在していた.HCV-geno typelb/II型のC型慢性肝炎において, NS5A領域のアミノ酸配列2209-2248とIFN治療効果との間に関連があり, 変異が少ないHCV陽性症例は, IFN治療に抵抗性であることが示唆された.しかし例外も存在していることから, IFNの治療効果の予測に関してはさらに検討が必要である.

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