昭和医学会雑誌
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57 巻, 2 号
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  • 斉藤 豊彦
    1997 年 57 巻 2 号 p. 97-107
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年, 尿路結石患者に対する治療は開腹手術にかわりPNL (percutaneous nephrolithotripsy) , TUL (transurethral ureterolithotripsy) , ESWL (extracorporeal shock wave lithotripsy) などの非観血的療法が確立されてきた.特にその中でもESWLが結石治療を全く新しい概念による治療法に変えてしまった.1990年4月から1996年3月までの6年間, 昭和大学泌尿器科外来を受診した腎・尿管結石患者567例に対し西ドイッ・ドルニエ社製第二世代結石破砕機器MPL9000を用い治療を施行した.567例623結石, 833回の治療につきその有用性, 安全性, 問題点などにつき検討したところ567人の患者動態では男女比が2.3: 1, 年齢分布は男女とも40-50歳代にピークを示した.治療成績では破砕率92.0%, 完全排石率82.8%でEchosystemでの破砕がX-raysystemよりも優れていた.治療回数および衝撃波発数は当機器に関しては結石成分よりむしろ結石の体積が関与しているように思われた, また今回の治療においては重篤な副作用は認められず安全かつ有用な治療法であることが示唆された.
  • 徳丸 敬
    1997 年 57 巻 2 号 p. 108-118
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    突発性難聴, 聴神経腫瘍患者における温度眼振検査の意義について温度眼振検査の加齢変化, パラメーター, 半規管機能低下の診断を含めて検討し, また臨床像の差異についても比較した.対象は突発性難聴33名33耳, 聴神経腫瘍17名19耳の計50名52耳である.検査方法は被験者を仰臥位とし前屈およそ30度の頭位で, 20mlの氷水を20秒間で一側外耳道内に注入し眼振を解発した.記録は電気眼振計を用いて最大緩徐相速度, 持続時間を測定した.健常耳では温度眼振検査の結果, 最大緩徐相速度, 持続時間ともに加齢の影響を認めず, 最大緩徐相速度20度/秒以上, 持続時間100秒以上を正常と定義した.患側の最大緩徐相速度が健側の50%を下回る場合, 患側の持続時間が健側の60%を下回る場合にのみ患側と健側の間に明らかな差があるものと判断した.突発性難聴の5名 (15.2%) , 聴神経腫瘍の2名 (15.4%) において持続時間では患側と健側の間に差がないにもかかわらず最大緩徐相速度で患側と健側の間に差を認めた.従って最大緩徐相速度が半規管機能を評価するパラメーターとして適当であると考えられた.眩暈の自覚のなかった突発性難聴では全例半規管機能低下を認めず, 眩暈の自覚のあった突発性難聴例でも半数以上に半規管機能低下を認めなかった.これは突発性難聴において眩暈は蝸牛病変の発現に伴う前庭半規管の一過性の可逆的病変によるものであり, 眩暈を自覚しても永久的な半規管機能低下は生じなかったのではないかと考えられた.突発性難聴の予後は温度眼振反応, 聴力型との関連を認めたが, 眩暈の有無とは明らかな関連性を認めなかった.聴神経腫瘍で平均腫瘍径が20mmを越えるものは例外なく半規管機能低下を示し, 10mm以内のものでは発生神経等により温度眼振反応に差がでるものと考えられた.聴神経腫瘍の大きさと聴力の間には明らかな相関はないが, 10mm以内の腫瘍は全例40dB以内の難聴であった.眩暈の自覚のあった聴神経腫瘍全例に半規管機能低下を認めたが, 眩暈の自覚のなかった症例にも半規管機能が低下している例を2例認めた.これは腫瘍による半規管機能低下の進行が緩徐な為, 代償作用がはたらいているのではないかと考えられた.ガンマーナイフを施行した4例中3例は, 観察期間3カ月から31カ月の間に明らかな聴力低下を認めず, 最大緩徐相速度, 持続時間にも患側と健側の間に差を認めなかった.
  • 坂井 俊之
    1997 年 57 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    精神分裂病に関与する病因遺伝子の研究は, 未だ確立された知見は得られていない.精神分裂病のドーパミン成因仮設に基づき, 各ドーパミン受容体サブタイプの遺伝子についても多くの研究がなされており, 関連を示唆する報告も少なくない.そのうち, ドーパミンD3受容体遺伝子Bal I多型 (Ser-9-Gly多型) は精神分裂病との関連性が特に注目されている.本研究では精神分裂病者の中でも家族歴を有する患者群を用いてこの関連性の有無を検討した.患者群は, DSM-IVにて精神分裂病と診断されたもののうち内因性精神病の家族歴を有する患者78名 (男性31名, 女性47名, 年齢44.4±13.2 (M±SD) 歳) である.健常対照群は精神疾患の既往の無い者90名 (男性36名, 女性54名, 年齢32.3±10.0 (M±SD) 歳) である.対象者のゲノムDNAから, PCR法にてこの多型性を持つDNAフラグメントを増幅し, 制限断片長多型により遺伝子型を設定した.患者群と健常対照群との遺伝子型および対立遺伝子頻度を比較し関連を検討した.臨床要因 (第一度親族に家族歴を持つか否か, 発症年齢, 総入院期間, 抗精神病薬服薬量) と遺伝子型・対立遺伝子頻度との関連についても検討した.結果は, 患者群と健常対照群では遺伝子型の分布, 対立遺伝子頻度ともに有意差を認めなかった.第一度親族に家族歴を持つか否か, 入院期間, 抗精神病薬服薬量についての検討でも同様に有意差を認めなかったが, 発症年齢に関しては21歳未満の発症者ではSer-9のホモ接合体を有する者がすくなかった.この結果は, ドーパミンD3受容体のSer-9-Glyの変異が精神分裂病の発症年齢と関連がある可能性を示唆する.
  • ―前頭葉比率―
    大〓 進, 段 俊恵, 鈴木 一正
    1997 年 57 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    生体の脳体積の加齢変化を検討し, 終脳の外套, とくに前頭葉について調べた.成人の脳は, 高齢者ほど萎縮のあることが一般的に良く知られている.これは通常の診療で見られるX線CT, 核磁気共鳴画像診断装置 (以下MR画像装置) などの画像あるいは解剖標本からも明らかである.そこで, 人の生体脳における体積の変化を調べる目的で, 臨床的に異常な神経症候を認めなかった新生児から高齢者までの症例のMR画像について検討した.とくに外套全体と, それに占める前頭葉の割合について検討することは, 脳の発達および加齢に伴う脳の体積変化の観点からも重要と考えた.そこで, 外套全体と前頭葉の体積比, つまり前頭葉外套比frontopallium volume ratio (FPVR, あるいは前頭葉比率) を求め, 年齢との関係を検討した.この研究では, 90歳代を除く各年代30症例のMR画像を資料として電子面積計を使って得た面積値から体積を算出した.脳の形態的変化を生後から90歳代までを連続的な変化として見ると, 10歳代に達するまでの成長はとくに著しく, 10歳までには形態的に成長後の脳にきわめて近い完成された形を確認できた.30~70歳代前半までは終脳外套にわずかずつ体積漸減の傾向を示し, 80~90歳代では急激に体積の減少を示す.この傾向は外套と前頭葉の体積減少の比率で検討したほうが明確であった.年齢とFPVRとの回帰分析では70歳付近を境にしてその前後では異なる関係を示した.体積量は発達にともなって幼児期に急増し, 加齢とともに減少する.しかし, その減少の傾向は年齢に正比例はしない.つまり, 年代により脳の発達や体積減少の速度に差があり, 10~50歳代程度までは平均値に増減があり, 60歳代からは非常に緩やかな減少を示し, 80歳代以後は急加速で減少することがわかった.このように, 前頭葉体積値を外套体積値で除してその比率を求め, FPVR (あるいは前頭葉比率) として表わすことにより, 脳の発達や萎縮を明確に表現できることが判明した.各年代の前頭葉比率の標準値を示してあり, それを基準値として用いることにより, MR画像から脳体積値の正確な診断に応用することが期待できる.
  • ―NS 5A領域の遺伝子構造との関連―
    馬場 俊之, 石井 誠, 三田村 圭二, 米山 啓一郎
    1997 年 57 巻 2 号 p. 132-138
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    C型肝炎ウイルス (HCV) の遺伝子型1b/II型 (HCV-genotype 1b/II型) のC型慢性肝炎において, HCV遺伝子のNS5A領域のC末端に支配されるアミノ酸配列2209-2248に変異が少ない症例では, interferon (IFN) の治療効果が低いと報告されている.昭和大学医学部第二内科にて組織学的及び分子遺伝学的にHCV-geno type 1b/II型のC型慢性肝炎と診断された22症例を対象に, NS5A領域のアミノ酸配列2209-2248をプロトタイプのHCV-Jと比較し, その変異数とIFN治療の効果との関連を検討した.アミノ酸の変異数により, 変異が認められないHcvをwild type, 変異数が1~3のHCVをintermediate type, 変異数が4以上のHCVをmutanttypeとした.IFN治療の効果判定は, 投与終了後6カ月の時点のalanine aminotransferase (ALT) と血中HCV-RNAの推移により, ALT正常, 血中HCV-RNA陰性であった症例を著効とし, その他の症例を無効とした.22例中, wild typeのHCV陽性例は13例, intermediate typeのHCV陽性例は6例, mutant typeのHCV陽性例は3例であった.それぞれの著効率は, wild type陽性例では13例中3例23.1%, intermediate type陽性例では6例中1例16.7%, mutant type陽性例では3例中2例66.7%であった.しかし, mutant type陽性例では著効率が高いものの, wild type陽性例, いわゆる変異を認めなくても著効の症例や, mutant type陽性例で変異数10にもかかわらず無効の症例が存在していた.HCV-geno typelb/II型のC型慢性肝炎において, NS5A領域のアミノ酸配列2209-2248とIFN治療効果との間に関連があり, 変異が少ないHCV陽性症例は, IFN治療に抵抗性であることが示唆された.しかし例外も存在していることから, IFNの治療効果の予測に関してはさらに検討が必要である.
  • 鈴木 孝雄, 橋本 通
    1997 年 57 巻 2 号 p. 139-148
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ホルター心電図は今日広く普及しているが, 不整脈, とくに上室性不整脈の自動診断に対する信頼性は低く, その診断精度向上にはP波自動検出が不可欠である.発作性心房細動 (PAf) は日常診療においてよく遭遇し, その臨床的管理がきわめて重要な上室性不整脈である.ホルター心電図において自動診断が可能となれば臨床上有用と考えられる.今回, P波およびPAf検出アルゴリズムを考案し, 医師判定と比較することでPAf自動診断の精度と問題点について検討した.P波自動検出は12例を対象に36754個の洞性P波により検討した.感度は94.3%, 陽性反応的中度は98.5%であった.低振幅, ノイズ混入や先行するT波上に重なるP波を検出できないことがあった.低振幅に加えてノイズが多い場合にP波を誤検出することがあった.PAf自動診断は, ホルター心電図にて30秒以上持続するPAfを認めた15例を対象に, 医師判定による101回のPAfで比較検討した.PAfの開始点と終了点が一致したものは63.4% (64/101) , 終了点のずれが数拍以内のものが23.7% (24/101) であり, 両者をあわせるとPAfの正診率は87.1% (88/101) であった.誤検出は, 心房期外収縮のショートランや二段脈, 三段脈の頻発によりR-R間隔の不整が顕著で, かつP波が検出されない場合であった.f波をP波と誤認してPAfと診断できなかったものが101回中8回あった.自動診断によりPAfの開始点と終了点が明確にされ, 従来十分な情報が得られなかった発作中の総心拍数, 持続時間, 洞調律回復時間, 最大R-R間隔および発作中の平均・最大・最小各心拍数を自動的に計測することで臨床的評価が可能となった.本システムは, PAf自動診断に有用であると思われた.
  • 横川 友久
    1997 年 57 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病は黒質線条体, 淡蒼球, 青斑核などの大脳基底核病変を中心とした神経核変性疾患であり, 錐体外路症状を中心に多様な症状を呈する.近年インピーダンスオージオメトリーの測定に関する機器の普及により, 神経変性疾患におけるアブミ骨筋反射の異常が報告されてきているが, パーキンソン病についてはほとんど報告が見られていない.今回われわれは, パーキンソン病患者10名についてアブミ骨筋反射を記録し, その波形より各種潜時を測定し正常耳と比較検討した.対象は太田熱海病院神経内科入院中のパーキンソン病患者と, 正常若年者及び正常老年者で, その聴力, アブミ骨筋反射閾値を測定し, ついでアブミ骨筋反射をX-Yレコーダに記録して諸潜時の測定を行なった.その結果, 正常若年者と正常老年者の間には差が見られず, 正常老年者とパーキンソン病患者の間においてアブミ骨筋反射潜時の一部に延長を認めた.このことは, 従来のアブミ骨筋反射の反射経路の他にも別の経路が存在することを推測させた.
  • 刑部 義美, 兼坂 茂, 成原 健太郎, 高橋 愛樹, 清 佳浩
    1997 年 57 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    薬物による過敏反応の結果, 臨床的に高熱と共に急激に皮膚症状が発症しNikolsky現象を認め, 特異な水疱形成とびらんを持ち, 組織学的に表皮の融解壊死を主徴とした予後不良な疾患を薬剤性TEN (中毒性表皮壊死症) とLyellが報告している.今回, 発症から死亡まで約8日間と極めて急激な経過を取った非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) が原因と思われた薬剤性TENを経験したので報告する.症例は38歳の女性, 既往に数種類の薬剤による過敏反応有り.経過は近医で上気道炎の診断でフォスフォマイシン (FOM) 系抗生剤とマクロライド系抗生剤のクラリスロマイシン (CAM) , 更に数種のNSAIDsが処方された.服用後2日目頃より顔面, 体幹に発疹と39℃の高熱が出現, 以後発疹は増強し続けて心窩部を中心とした激烈な腹痛も出現した事から入院となった.入院時より心, 肺, 肝機能障害, 消化管出血, DICと共に皮膚にNikolsky現象を認めた.臨床経過よりNSAIDsが原因の薬剤性TENと考えステロイドのパルス療法, 血液浄化療法, G-CSF療法等の治療を行ったが入院5日目に永眠した.剖検の結果は主要な実質臓器からの出血と全ての消化管粘膜が剥離し血液が管腔内に充満していた.
    本症は薬疹の中では0.4%と頻度は低いが対応を誤ると死の転機をとり易いために薬剤 (特にNSAIDs) 投与時にはTEN発症を常に念頭におく必要がある.
  • 初見 俊明, 瀧川 宗一郎, 武本 雅治, 雨宮 雷太, 石黒 洋
    1997 年 57 巻 2 号 p. 161-164
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    距骨下関節脱臼は稀な外傷である.われわれは極めて稀と思われる足関節脱臼骨折を伴った距骨下関節脱臼の一症例を経験した.受傷後早期の整復固定と愛護的なリハビリテーションを行い, 良好な結果を得たので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 唐 培, 高崎 幸雄, 新妻 晶, 水口 文, 神宮 俊哉, 笠井 史人, 水間 正澄, 森 義明
    1997 年 57 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    下肢切断者に対して手術後できるだけ早く義足歩行訓練を開始することは大変重要である.われわれは2例の血行障害による高齢大腿切断患者のリハビリテーションで, サーモプラスチックを用いた訓練用義足の作製を経験した.症例1は69歳男性で, ASOの診断にて右大腿切断術を施行した.症例2も69歳男性で, Buerger病のために左大腿切断術を施行した.2症例には, 術後早期より訓練用義足ソケットをサーモプラスチックにて作製し, 歩行訓練を開始し, 現在, ロフストランド杖を使用し大腿義足にて歩行可能となった.今回, サーモプラスチックによる訓練用義足の有用性と高齢切断者に対する義足の適応について検討した.
  • 坂西 齢佳, 辻 祐一郎, 野嵜 善郎, 竹内 敏雄, 田角 勝, 飯倉 洋治, 笠井 史人, 岡田 奈緒美, 北川 寛直, 依田 光正, ...
    1997 年 57 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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