昭和医学会雑誌
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ホルター心電図における発作性心房細動自動診断
鈴木 孝雄橋本 通
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1997 年 57 巻 2 号 p. 139-148

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抄録

ホルター心電図は今日広く普及しているが, 不整脈, とくに上室性不整脈の自動診断に対する信頼性は低く, その診断精度向上にはP波自動検出が不可欠である.発作性心房細動 (PAf) は日常診療においてよく遭遇し, その臨床的管理がきわめて重要な上室性不整脈である.ホルター心電図において自動診断が可能となれば臨床上有用と考えられる.今回, P波およびPAf検出アルゴリズムを考案し, 医師判定と比較することでPAf自動診断の精度と問題点について検討した.P波自動検出は12例を対象に36754個の洞性P波により検討した.感度は94.3%, 陽性反応的中度は98.5%であった.低振幅, ノイズ混入や先行するT波上に重なるP波を検出できないことがあった.低振幅に加えてノイズが多い場合にP波を誤検出することがあった.PAf自動診断は, ホルター心電図にて30秒以上持続するPAfを認めた15例を対象に, 医師判定による101回のPAfで比較検討した.PAfの開始点と終了点が一致したものは63.4% (64/101) , 終了点のずれが数拍以内のものが23.7% (24/101) であり, 両者をあわせるとPAfの正診率は87.1% (88/101) であった.誤検出は, 心房期外収縮のショートランや二段脈, 三段脈の頻発によりR-R間隔の不整が顕著で, かつP波が検出されない場合であった.f波をP波と誤認してPAfと診断できなかったものが101回中8回あった.自動診断によりPAfの開始点と終了点が明確にされ, 従来十分な情報が得られなかった発作中の総心拍数, 持続時間, 洞調律回復時間, 最大R-R間隔および発作中の平均・最大・最小各心拍数を自動的に計測することで臨床的評価が可能となった.本システムは, PAf自動診断に有用であると思われた.

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