昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
薬剤性TEN (中毒性表皮壊死症) の1症例
刑部 義美兼坂 茂成原 健太郎高橋 愛樹清 佳浩
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 57 巻 2 号 p. 155-160

詳細
抄録

薬物による過敏反応の結果, 臨床的に高熱と共に急激に皮膚症状が発症しNikolsky現象を認め, 特異な水疱形成とびらんを持ち, 組織学的に表皮の融解壊死を主徴とした予後不良な疾患を薬剤性TEN (中毒性表皮壊死症) とLyellが報告している.今回, 発症から死亡まで約8日間と極めて急激な経過を取った非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) が原因と思われた薬剤性TENを経験したので報告する.症例は38歳の女性, 既往に数種類の薬剤による過敏反応有り.経過は近医で上気道炎の診断でフォスフォマイシン (FOM) 系抗生剤とマクロライド系抗生剤のクラリスロマイシン (CAM) , 更に数種のNSAIDsが処方された.服用後2日目頃より顔面, 体幹に発疹と39℃の高熱が出現, 以後発疹は増強し続けて心窩部を中心とした激烈な腹痛も出現した事から入院となった.入院時より心, 肺, 肝機能障害, 消化管出血, DICと共に皮膚にNikolsky現象を認めた.臨床経過よりNSAIDsが原因の薬剤性TENと考えステロイドのパルス療法, 血液浄化療法, G-CSF療法等の治療を行ったが入院5日目に永眠した.剖検の結果は主要な実質臓器からの出血と全ての消化管粘膜が剥離し血液が管腔内に充満していた.
本症は薬疹の中では0.4%と頻度は低いが対応を誤ると死の転機をとり易いために薬剤 (特にNSAIDs) 投与時にはTEN発症を常に念頭におく必要がある.

著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top