昭和医学会雑誌
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外傷性肝損傷58症例の検討: 形態分類, 肝機能検査, 予後規定因子について
佐々木 純山口 真彦中野 浩松宮 彰彦松本 匡史酒井 均吉澤 康男緑川 武正真田 裕熊田 馨成原 健太郎葛目 正央竹田 稔
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1999 年 59 巻 2 号 p. 151-159

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抄録

日本外傷学会の定める外傷性肝損傷分類は主に損傷の形態によって行われているが, 肝の傷害程度を示す指標とは必ずしもいえない.そこで1985年から1998年までの約14年間に昭和大学藤が丘病院救命救急センターに入院した外傷性肝損傷58例について肝損傷分類と肝損傷のCTボリュームメトリー, 肝機能検査等を比較し, 予後を規定する因子について検討した.
AST, ALT, プロトロンビン時間, ヘパプラスチンテスト, 肝ボリュームメトリーによる肝損傷の割合などの肝機能検査所見は肝損傷分類Ia, Ib, II, IIIa, mbともに肝機能障害の重症化を示さなかった.肝ボリュームメトリーによる肝損傷の割合と肝逸脱酵素であるASTおよびALTは相関しなかったが, ヘパプラスチンテスト, プロトロンビン時間とは有意に相関し, 開腹手術時出血量とも有意な相関がみられた.外傷性肝損傷全体の生死を左右する因子として年齢, 来院時収縮期血圧, ショックの有無, 多発外傷指数であるISS, 入院期間, プロトロンビン時間, ヘパプラスチンテスト, 開腹手術時出血量などが挙げられ, 肝損傷が最も高度で肝損傷自体が予後を左右すると考えられるIIIb型肝損傷ではプロトロンビン時間, ヘパプラスチンテスト, 開腹手術時出血量が有意な予後規定因子であった.結果より, 日本外傷学会の定める肝損傷分類が肝機能障害の重症度を必ずしも示さず, プロトロンビン時間, ヘパプラスチンテスト, 開腹手術時出血量は肝損傷の程度を示唆し, 外傷性肝外傷の予後に関する重症度を来院時に予想しうる因子としてプロトロンビン時間, ヘパプラスチンテストが重要であると推測された.死亡症例の検討では死亡例の殆どが出血によるものであり, 出血量のコントロールが重要であった.

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