昭和医学会雑誌
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出産前後の母親の精神不安に係わる要因の解明に関する研究
藤田 八千代星山 佳治田中 千登世中山 和美川口 毅
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キーワード: 妊産婦, 追跡調査, 母親学級
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1999 年 59 巻 2 号 p. 160-171

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抄録
東京都内のS大学が開催した母親学級に出席した166人の初産婦を対象に, STAIの不安尺度を用いて測定し特性不安ならびに状態不安 (以下, 精神不安という) と妊娠・出産前後の経過およびLocus of Controlによる母親の自尊意識等との関係を調査した.調査対象は, 妊娠19週から25週の妊婦を対象に行なわれている産前教育の受講前 (以後, 産前教育 (1) と記す) , および妊娠30週から36週の妊婦を対象として行なわれている産前教育の受講後 (以後, 産前教育 (n) と記す) , ならびに出産後4日目の褥婦 (以後, 産後 (III) と記す) とした.調査の結果, STAIによる特性不安, 状態不安は, 共に妊娠週数の進行と出産の終了に伴って次第に低下していた.特に産前教育 (I) の時期における特性不安は52.1%が高度の不安状態にあった.次に産前教育 (I) の時期における特性不安および状態不安を, 不安の高位群の占める割合について, Locusの1群 (外的統制) と3群 (内的統制) を比較すると, 全体に占める不安の高位群の割合は, Locus1群とLocus3群の間に差は認められないが, 状態不安についてはLocus1群がLocus3群の者に比較してSTAIによる状態不安の高位群の占める割合が高かった.次に妊婦健康診断において医師から指摘された事項や自覚症状についてLocusの型別にSTAIによる不安高位率をχ2検定を用いて比較検討した結果, 医師からの指摘による「足に浮腫がある」, 「前置胎盤」, 「血圧が高い」および「尿糖あり」の各症状, ならびに自覚症状の「倦怠感」, 「腰痛」, 「胸やけ」, 「手のこわばり」および「胃がつかえた感じ」の各症状については, STAIの不安高位率がLocusの3群のものに比較してLocus1群は有意に高いことが明らかにされた.
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