抄録
われわれは細胞内シグナル伝達の一端を担っていると予想されるタンパク質PHAP IおよびPHAP皿に相互作用するタンパク質を探索し, PHAP Iが脳可溶性画分に存在するプロテインキナーゼによってセリン残基にリン酸化を受けることを報告してきた.本実験ではこのプロテインキナーゼによるPHAP Iのリン酸化の意義を調べるため, リン酸化部位の同定およびプロテインキナーゼの特徴付けを行った.ヒトPHAP Iには12箇所のセリン残基が存在するが, このうち1ないし2箇所欠失した種々のPHAP I変異体を作製し, これらを基質としてリン酸化反応を行ったところアミノ酸配列上204番目のセリン残基がリン酸化されていることが示唆された.このPHAP Iキナーゼをゲル内リン酸化反応で解析した結果, 37kDaと39kDaの2種のタンパク質バンドが検出され, 少なくともこのプロテインキナーゼの触媒サブユニットは2種類あることを確認した.また, ゲル濾過の結果からこのプロテインキナーゼは生理的には多量体もしくはサブユニット構造をとっている可能性が示唆された.現在のところ, このPHAP Iキナーゼが何であるかは未同定であるが, PHAP Iの核内移行シグナルが存在する酸性領域近傍にリン酸化を受けることから, PHAP Iの核への局在化の制御にこのリン酸化が関与していることが推測された.