昭和医学会雑誌
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T1乳癌の乳房温存療法の検討
神谷 憲太郎沢田 晃暢橋本 行弘柏瀬 立尚志賀 俊行草野 満夫
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1999 年 59 巻 4 号 p. 452-458

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抄録
1990年より1996年に当科で手術を施行した257例のT1乳癌のうち, 乳房温存手術が可能であった69例を中心に非定型乳房切除施行188例と対比検討した.当教室における乳房温存術の適応基準は腫瘍径2.0cm以下でNO, さらには腫瘍乳頭間距離が2.5cm以上としている.
温存手術症例は年々増加し1996年では24例までに増加を認め, 非定型乳房切除術を逆転した.年齢別にみると, 40歳代で22例, 50代 (21例) , 60代に20例となっており, この3世代で全乳房温存手術の91%を占めていた.温存手術後の病理学的特徴としては, 69例中乳頭腺管癌が28例, 充実腺管癌が8例, 硬癌が27例, その他が6例であり, 乳頭腺管癌と硬癌が多く認められ, 非定型乳房切除術と同傾向を示した.リンパ節への転移n0, n1α, n1β, に関しては, 乳房温存手術と非定型乳房切除術での術式によるリンパ節転移の有意差はみられなかった.また, 乳房温存手術69例中, 再発を認めた症例は5例 (7.2%) で死亡症例は存在しなかった.これに関しても, 両術式間で有意差を認めなかった.
乳房温存手術後の再発部位としては骨に3例, 局所 (残存乳腺) に3例, 肺に1例 (重複あり) であり, この5例の再発までの期間は全てが3年以内で, 腫瘍乳頭間距離に左右されなかった.再発5症例の病理学的特徴としては組織型で充実腺管癌が2例, 乳頭腺管癌が1例, 硬癌が1例, 粘液癌が1例であり, リンパ節転移ではn1αが5例中3例で, nO症例は2例であった.放射線照射を施行した症例に局所再発を認めなかった.温存手術後再発のRisk Factorとして値が高いものは, 腋窩リンパ節転移, ly, V, 因子であった.
乳房温存手術は年々増加しており, 温存手術後にサルベージ手術を行う可能性や再発の可能性など, 手術術式に合わせたインフォームドコンセントが必要である.T1乳癌において温存手術の再発率, 死亡率は非定型乳房切除術と有意差を認めなかった.温存手術後再発のRisk Factorとして, v, ly, やリンパ節転移等が考えられた.温存手術適応基準として切除断端陰性を保つことができればNTDを2.5cm以上保つ必要性が無いことが示唆され, さらに温存術後の残存乳腺に放射線を照射することが局所再発の制御に有効であると考えられた.
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