昭和医学会雑誌
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未治療前立腺癌のDNA Flow Cytometryによる細胞周期解析についての検討
松田 信泰小野寺 恭忠池内 隆夫甲斐 祥生
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キーワード: 前立腺癌, 細胞周期解析
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2000 年 60 巻 4 号 p. 513-517

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抄録

前立腺癌は予後が良いとされる高分化型腺癌であっても内分泌療法に抵抗性を示す例や, 逆に低分化型腺癌であっても著効する例をしばしば経験する.そこで, 未治療前立腺癌患者に対してFlow Cytometryによる細胞周期解析を施行し, 予後因子となり得るか検討した.未治療前立腺癌患者の35例の前立腺針生検組織を用いてFlow Cytometryによる細胞周期解析を行い病理組織学的分化度, 臨床病期および年齢との相関を検討し, 以下の結果を得た.1.前立腺肥大症と比較すると前立腺癌は細胞周期ではG0/G1期が少なくS期が多かった (p<0.01) .2.DNAヒストグラムではDNA diploidが21例 (60.0%) , DNA aneuploidは10例 (28.6%) , DNA tetraploidが4例 (11.4%) であった.前立腺肥大症は全例DNA diploidであった.高分化型腺癌はすべてDNA diploidであり, DNA tetraploidはすべて低分化型腺癌であった.病理組織学的分化度が低下するにともないDNA aneuploidの割合が増加した.3.臨床病期では35例中31例 (88.6%) がStage C以上であり, Stageでの検討はできなかった.4.DNA index1.0の症例と1.0を越える症例を比べるとDNA index1.0の症例のほうが年齢が高かった (p<0.05) .これらの結果より, 前立腺癌は前立腺肥大症と比較すると細胞周期の分布は異なっていること, 病理組織学的分化度とDNAヒストグラムには相関があること, DNA indexと臨床癌となるまでの期間との相関が示唆された.Flow Cytometryによる前立腺癌の細胞周期解析は予後決定因子として有用であると思われた.

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