昭和医学会雑誌
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幼若ラットのInsulin-like Growth Factor-I産生におよぼす性ステロイドホルモンの影響と性差について
藤原 紹生長塚 正晃鈴木 紀雄白土 なほ子盛本 太郎千葉 博齋藤 裕矢内原 巧
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2000 年 60 巻 4 号 p. 518-523

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抄録

思春期女子の身体発育にInsulin-like Growth Factor-I (IGF-I) とandrogenが密接に関与することが報告されているが, IGF-I産生における性ステロイド (St) の影響とその作用に性差が存在するかについては不明な点が多い.我々はIGF-Iの主な産生臓器である肝におけるIGF-I産生に注目し, ヒトの思春期前期にあたる幼若の雌雄ラットの性腺を摘除し, 肝におけるIGF-I産生におよぼすStの影響について性差を比較した.Wistar系幼若雌雄ラット50匹を対象とした.日齢14でエーテル麻酔下に卵巣摘除手術 (OVX, n=20) , 精巣摘除手術 (ORX, n=20) を施行し, それぞれに日齢15よりestradiol (E2, 0.01 nmol/body, n=5) , testosterone (T, 1nmol/body, n=5) , dihydrotestosterone (DHT, 0.1 nmol/body, n=5) を連日28日間皮下投与した.雌雄それぞれに偽手術を行い (n=5) 連日生理食塩水を投与した.日齢42に体重を測定し, 血液, 肝臓を採取した後, 屠殺した.血中IGF-IはRIA法で測定し, 肝組織におけるIGF-ImRNA発現をNorthern blot法で検討した.ラット体重の性腺摘除とSt投与による影響性腺摘除により, メスでは体重は増加傾向, オスでは減少傾向を示した.一方, St投与では, 雌雄ともestrogen投与は抑制的にandrogen投与は促進的に作用することが示された.血中IGF-I値の変化: 性腺摘除により, メスでは増加傾向を示したが, オスでは変化が認められなかった.St投与では, androgenは雌雄とも血中IGF-I値を増加させる一方, estrogenではメスはその値を低下, オスでは増加させるという性差が認められた.肝IGF-ImRNA発現の変化: 性腺摘除により, メスではその発現は増強し, オスでは変化を認めなかった.またandrogen投与は雌雄ともその発現を増強させたが, estrogen投与はメスでは抑制, オスでは増強させ, 性差が認められた.これらの変化は血中IGF-I値の変化と同様の傾向であった.幼若ラット肝におけるIGF-I産生はStにより影響を受け, ラットの身体発育, IGF-I産生にandrogenは雌雄とも促進的に働く一方, estrogenはメスでは抑制的に作用するもオスでは促進的に作用することから, IGF-Iに対するStの作用に性差があることが初めて示された.

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