昭和医学会雑誌
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ラット骨芽細胞様細胞 (UMR106-01, C26細胞株) における5α-Reductase, 17β-Hydroxysteroid Dehydrogenase活性
大倉 史也藤川 浩齋藤 裕矢内原 巧
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キーワード: 骨芽細胞
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2000 年 60 巻 4 号 p. 524-531

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抄録

骨芽細胞にエストロゲンとアンドロゲンのレセプターが発現し, 性ステロイドが骨芽細胞に直接作用して, 骨芽細胞の増殖および化骨に関与すると報告されている.また, ヒト骨芽細胞に種々のステロイド代謝酵素活性とその遺伝子の発現が報告されて以来, 骨芽細胞は性ステロイドの標的細胞のみならず自ら性ステロイドの代謝能を有し, その機能調節に関与している可能性が示唆されている.骨芽細胞におけるエストロゲンの作用については多くの研究報告がされているが, アンドロゲン生成については未だ不明な点が多い.今回我々は, ラット骨芽細胞におけるアンドロゲン生成代謝能を有することについて以下の実験, 観察をおこなった.ラット由来の骨芽細胞様細胞株UMR106-01, C26のcell free homogenateを用いて, [14C] testosterone (T) , [14C] androstenedione (A) とインキュベーションした.UMR106-01細胞株ではTよりdihydrotestosterone (DHT) , Aより5α-androstanedione (5α-A) の生成 (5α-reductase活性) がみられ, Tを基質とした際のKm値は42μMであった.また, C26細胞株では, AからTの生成 (17β-hydroxysteroid dehydrogenase, 17β-HSD) がみられ, そのKm値は41μMであった.骨芽細胞におけるこれら酵素のmessenger ribonucleic acid (mRNA) 発現をRT-PCR法を用いて検討したところ, UMR106-01細胞株では5α-reductase type I mRNAの発現を, また, C26細胞株では17β-HSDtype IのmRNA発現を確認した.今回, 由来の異なるラット骨芽細胞様細胞を用いて, アンドロゲン代謝能を検討したところ, UMR106-01細胞株では5α-reductaseの, C26細胞株では17β-HSDの酵素活性を認め, さらに5α-reductase, 17β-HSD mRNA発現を認めた.以上の結果から, 骨芽細胞がよりアンドロゲン作用の強いステロイドへの転換能を有していることが明らかになり, 骨芽細胞は骨の局所でのアンドロゲン代謝に重要な役割を果たしていることを示唆している.

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