昭和医学会雑誌
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思春期女子におけるDehydroepiandrosterone, Androstenedione, Androsterone, Androstanediol値の血中動態
関谷 雅博千葉 博長塚 正晃河合 清文矢内原 巧
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キーワード: 思春期, 女子, 副腎
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2000 年 60 巻 4 号 p. 532-539

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抄録

思春期は内分泌変化の著しい時期であり特に各種性ホルモンは大きな変動を示す.副腎におけるアンドロゲン分泌もまた同様であり, 恥毛等の二次性徴の発育に関係している.また, その分泌開始の時期が性腺系の発動の時期に先んずることおよび副腎性アンドロゲンの過剰分泌が性早熟をきたすことがある事より, 思春期発来機構への関与が示唆されている.しかし思春期女子における副腎性アンドロゲンの動態に関する詳細な報告は少ない.そこで今回我々は代表的副腎性アンドロゲンであるdehydroepiandrosterone (以下DHAと略) , その抱合型であるdehydroepiandrosterone-sulfate (以下DHA-Sと略) androstenedione (以下△4Aと略) , androsterone (以下5α-Aと略) , androstanediol (以下5α-Adと略) の血中値を6歳~17歳の思春期女子120名を対象として測定しその動態, および初経発来との関係を検討した.DHAは8歳ころより増加の傾向を示すが, 特に11~12歳にかけての増加が著しい.DHA-Sは8歳以降年齢とともに漸増する.△4A値は初経発来以前は著変なく初経発来以降緩やかに上昇する.5α-A値は8歳~9歳にかけ有意に増加し以後年齢とともに漸増する.5α-Ad値は上記各ホルモンと異なり, 初経発来時期の11~12歳にかけ有意に低下し, 未初経発来群は初経発来群に比し高値を示した.以上のようにDHA, DHA-S, △4A, 5α-A値は初経発来群が未発来群に比し高値の傾向を示し, かつ年齢とともに増加傾向を示す.一方5α-Ad値は初経発来時期の11歳~12歳にかけ有意に低下した.以上の成績はDHA, DHA-S, △4A, 5α-Aなど副腎性アンドロゲンが思春期性成熟に従って増加する一方, 中枢抑制作用をもつ5α-Adが初経発来周辺期に有意に低下していることより, 初経発来機構にこれらのステロイドの変化が深く関与している可能性が示唆された.

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