抄録
症例は71歳男性.腹部膨満感, 食欲不振となり近医受診時, 超音波検査にて多量の腹水を認めたため当科紹介受診となった.当科外来にて精査するも診断のつかないまま, 本人の意志で受診せず約4年間無治療にて放置されていた.その後腹部全体の圧痛, 下痢, 発熱を来したため来院し, 緊急入院となった.入院後, 腹部超音波, 腹部CT検査, 腹部MRI検査, 腹水細胞検査, 注腸検査, 大腸内視鏡検査等施行し, 腹膜偽粘液腫と診断した.本例の治療に関しては腹水の洗浄, 抗生剤の全身投与, 抗癌剤の腹腔内投与を施行し, 症状の改善, 腹水の減少を認めた.本疾患の治療においては虫垂摘出手術, 腹腔内洗浄, 全身, 腹腔内化学療法, 抗生剤による腹腔内洗浄が基本となる.しかし無治療にて約4年間経過した症例の報告は稀であり, 本症の予後を考える上で貴重な症例と考えられ報告する.