昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
二酸化窒素吸入による中毒の一症例
刑部 義美高橋 愛樹成原 健太郎兼坂 茂葛目 正央佐々木 純金子 有子
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 60 巻 5 号 p. 642-648

詳細
抄録
二酸化窒素吸入による中毒は防火作業, 溶接業, メッキ業などに従事する人に発症しやすいが, 本邦では余り知られていない.今回, 我々はメッキ業を営む64歳の男で硝酸と硫酸の混合液にニッケルメッキを賦したアルミ棒を挿入し, メッキ抽出作業中に二酸化窒素を吸入し, その後, 激しい呼吸困難と胸部圧迫感が出現, 近医にて急性肺水腫と診断され集中治療目的で本院救命センターに搬送後, 二酸化窒素による急性呼吸窮迫症候群 (acute respiratory distress syndrome・ARDS) と診断した症例を経験した.治療は人工呼吸管理を中心に最高気道内圧 (peak inspiratory pressure・PIP) , 肺胞の虚脱や無気肺の改善を目的として人工肺サーフアクタント, 更に各種ケミカルメデイエーター遊出阻止の目的でメチルプレドニゾロンの使用にて, 14日目には一般病棟に転出できた.本疾患は治療に比し予防が重要で, 作業所の改善や防護体制の整備, 更に疾患の存在を一般に認識させることが大切であると思われた.
著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top