昭和医学会雑誌
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ラット脳凍結損傷モデルにおけるERM (Ezrin/Radixin/Moesin) ファミリーの発現
遠藤 孝裕佐々木 晶子神保 洋之池田 幸穂松本 清立川 哲彦
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2002 年 62 巻 1 号 p. 36-42

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抄録
外傷性脳損傷における, 神経細胞の壊死や変性は二次的にアストロサイトの腫脹や血管内皮細胞の障害を引き起こし, 血液脳関門の破綻による脳浮腫が発生することが考えられる.しかしながら, この脳浮腫の発生過程には細胞の退行性変化ばかりでなく, 細胞・組織修復機構の進展も考えられる.そこで本研究は脳損傷後の中枢組織の細胞・組織修復機構において, neuron-filial interactionが重要であると考え, 細胞接着因子として細胞間の情報伝達を担っているERMファミリーに関して, ラット脳凍結損傷モデルを用いてその発現を検索した.方法は, 250gのWistar系雄ラットの頭部を固定し, 脳凍結損傷モデルを作成し, 術後1日, 4日, 7日, 10日, 14日 (すべてn=3) 後に断頭し, 凍結切片を作り, 免疫染色を行った.その結果, Ezrinは外傷後4日例より外傷により壊死した周辺組織部位および海馬で発現がみられた.またRadixinは外傷後7日例より外傷側海馬に発現を認めた.また, Moesinはコントロールにおいていずれの細胞にも発現を認めなかったが, 外傷後4日例より外傷により壊死した周辺組織部位および海馬で発現がみられた.さらにERMファミリーとGFAP, およびMoesinとPCNAの二重染色では発現部位に一致した細胞が認められた.以上のことから, 外傷部位および海馬においては, 神経細胞で生じた変性がアストロサイトへ情報伝達される過程において, 細胞間接着因子の裏打ちタンパク質群であるERMファミリーの発現が関与しており, それらは細胞修復過程にも影響している可能性が示唆された.
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