昭和医学会雑誌
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Cardioplagiaに添加したNa+/Ca2+交換系阻害薬KB-R7943の虚血再灌流障害における心筋保護効果について
塩尻 泰宏井上 恒一板垣 太郎浅野 満尾頭 厚安藤 進高場 利博
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2004 年 64 巻 2 号 p. 234-242

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抄録
心筋の虚血再灌流障害における細胞内Ca2+過負荷を抑制する目的で選択的Na+/Ca【2+】交換系阻害剤KB-R7943を虚血前灌流液に添加し, その心筋保護効果について検討した.ラット摘出灌流心を用い, 虚血前に以下の溶液を添加した灌流液を3分間灌流投与した3実験群と冠灌流を単純遮断して虚血にした対照群で検討した.10μM/lのKB-R7943溶液 (KBR群) , K+濃度を20mM/lに調整したKCI溶液 (KCL群) , 10μM/lのKB-R7943溶液にKCIを添加しK+濃度を20mM/lにした溶液 (KBR-KCI群) .30分間常温 (36℃) 虚血後に再灌流し, 心機能 (心拍数 [HR] , 左室収縮張力 [LVC] , 左室最大収縮力変化率 [LVdc/dt] , 冠灌流量 [CF] の回復率および細胞内カルシウムイオン濃度を虚血前値と比較検討した.KBR-KCI群はさらに虚血時間を60分間に延長して心機能を検討した (KBR-KCI60群) .再灌流後30分ではKBR群, KBR-KCl群KBR-KCI60群は対照群に比較してLVC, LVdc/dtおよびCFにおいて良好な回復を示した.また再灌流後30分でKBR-KCl群はKBR群に比較してLVC, LVdc/dtおよびCFにおいて良好な回復を示した.KBR-KCI群, KBR-KCI60群の各群間には有意差を認めなかった.細胞内カルシウムイオン動態において, KBR-KCI群, KBR群は対照群及びKCI群に比較し虚血再灌流時における細胞内カルシウムイオンの過負荷は認めなかった.虚血前にKB-R7943を投与することで虚血再灌流時の細胞内カルシウムイオン過負荷を抑制し, 心筋の虚血再灌流障害を軽減した.またKB-R7943を心筋保護液に添加することでより虚血再灌流障害を軽減し得る可能性が示唆された.
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