昭和医学会雑誌
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変形性膝関節症患者関節液からの一酸化窒素の検出
江黒 剛浅野 和仁久光 正宮岡 英世
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2004 年 64 巻 3 号 p. 295-300

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抄録

変形性膝関節症 (以下OA) は中高年で最もよくみられる慢性関節疾患の1つであるが, 病態形成因子に関しては十分に解析されていない.近年, 一酸化窒素 (以下NO) をはじめとする活性酸素が各種疾患の病態形成因子として重要な役割を果たしていることが報告されている.そこで, 今回OA患者関節液からNOの検出を試みるとともに, OAの病態形成因子としてのNOの役割について考察した.研究対象は腰野の方法により分類したgrade1から4のOA患者各5名, 計20名と健常者3名であった.Griess法にてNOを, ELISA法にて炎症性サイトカイン (IL-1β, TNF-α, IL-6) ならびに軟骨マーカー (COMP) を測定した.関節液中のNO含有量はgrade 1では健常者と有意差はなかったものの, grade 2以上では健常者と比べ有意に増加していた.IL-1βはすべてのgradeにおいて健常者との間に有意差を認めなかったが, 炎症の際に産生が増強すると考えられているTNF-α・IL-6はgradeが上昇につれ関節液内での含有量が著増した.COMPは健常者と比較し全てのOA患者関節液で有意に高かった.上述した結果は, OAの関節内ではgrade上昇につれて炎症反応が強く発現すること, さらにはNOが病態形態因子として重要な役割を果たしている可能性を示唆している.

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