昭和医学会雑誌
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頸管擦過細胞を用いた頸管熟化に関与するmRNA発現の同定および定量に関する基礎的検討
栗城 亜具里盛本 太郎鈴木 真市塚 清健佐々木 康大槻 克文湯浅 朋子関沢 明彦斉藤 裕岡井 崇
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キーワード: 頸管熟化, 頸管上皮細胞
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2004 年 64 巻 3 号 p. 310-316

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抄録

周産期医療が発達した現在においても, わが国の早産率は約5%あり, 早産児は周産期死亡率の主原因である.早産は子宮頸管熟化と子宮収縮により発症するとされており, これらに関与する遺伝子発現の検出は早産発症機序を解明するために極めて重要である.我々は, 頸管擦過細胞を用いてRT-PCR法により各種遺伝子の発現の同定が可能かどうかについて検討した.切迫早産徴候のない陣痛発来前の妊婦を対象とし, ダクロン製スワブとブラシを用いて頸管内を擦過して細胞を採取し, パパニコロウ染色で確認したところ, 頸管円柱上皮細胞が確実に採取できたのはブラシであった.そこで, ブラシを用いて細胞を採取し, 従来のAGPC (Acid Guanidinium Phenol Chloroform) 法およびTRIZOL Reagentを用いた改良法にてRNAを抽出した結果, 後者でより多くのRNAが抽出された.さらに, 頸管熟化に関与することが知られている物質のmRNAの検出を試みた.cyclooxygenase-2, matrix metalloproteinase-3, tissue inhibitors of metalloproteinase-1, inducible nitric oxide synthaseの特異的プライマーを用いてRT-PCRを行い, direct sequence法でそれらの発現を確認した.さらに, LightCyclerを用いてCox-2mRNAの発現量を定量したところ, 妊娠中期群 (0.03±0.04copy/β-actin lcopy) と比較して, 妊娠末期群 (0.10±0.06copy/β-actin lcopy) でより多く発現を認めた.本研究で, 頸管擦過細胞からRNAを採取する方法が確立された.本法を用いれば非侵襲的に妊娠頸管における様々なmRNA発現の変化・追跡が可能であり, 妊娠週数による頸管の変化, とくに早産における子宮頸管熟化の病態解明に有用である可能性が示唆された.

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