昭和医学会雑誌
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腹部の手術を受ける患者のコーピングに関する実態調査: 手術前後のコーピング方略の構造的把握を目指して
城丸 瑞恵伊藤 武彦下田 美保子仲松 知子宮坂 真紗規堤 千鶴子久保田 まり
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キーワード: 腹部, 手術, 不安, コーピング, 患者
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2008 年 68 巻 6 号 p. 334-344

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抄録

本研究は, 腹部の手術を受ける患者の手術前後のコーピングの実態と構造を包括的に明らかにすることを目的とした.調査対象は, 腹部の手術をした患者113人中, 回収ができた103人である.手術前後において対応する各58項目を調査内容に設定して数量的に分析を行った.その結果, 手術前は手術後と比較してより多くの種類のコーピング方略を用い, また活用度も高い (p=038) 58のコーピング方略を研究者間で考慮して16領域に分類後, 多次元尺度法により布置図を作成した結果, 距離関係から4群に分類ができ, 「援助希求行動」と「積極的覚悟と行動」, また「緊張緩和行動」と「回避」がそれぞれ近い距離にあることを示した.LazarusとFolkmanを参考にして前者を問題焦点型コーピング, 後者を情動焦点型コーピングと位置づけた.この4群の中で手術前後にもっとも活用されたのが「積極的覚悟と行動」であり, 手術への覚悟と不安というストレスフルな課題に対する問題解決的援助の必要性が示唆された.一方, 「緊張緩和行動」は, 手術後に有意に増加しており (p<001) , 情動焦点型コーピングへの看護援助も相対的に重要になることがうかがわれた.悪性腫瘍群と非悪性腫瘍群の間では, 悪性腫瘍群は手術前「情緒的回避 (p=002) 」「成長期待 (p=002) 」.手術後「計画立案 (p=030) 」が, 非悪性腫瘍群より有意に高く, 苦痛緩和に対して回避のコーピング方略が有効である可能性が示唆された.手術前の患者の問題解決型コーピングの援助, 特に情報提供を十分に行うことが, 看護の重要課題の一つであることが明らかになった.また, 手術前だけでなく, 手術後のコーピングに対する援助も看護的援助の課題であることを問題提起した.

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