2017 年 55Annual 巻 3PM-Abstract 号 p. 229
神経伝達物質の放出異常が原因の神経疾患は多く、ヒト由来神経細胞を用いた神経疾患メカニズムの解明や創薬への応用が期待されている.しかしながら,培養細胞から放出される極少量の神経伝達物質をリアルタイムに計測できる技術はほとんど無い.そこで本研究では、代表的な神経伝達物質であるドーパミン(DA)に着目し、細胞外で非侵襲かつリアルタイムにドーパミン放出を計測できるカーボンナノチューブ(CNT)平面微小電極アレイ(MEA)チップの開発を目的とした。電解めっき法を用いて、50μm2の微小電極が64個並んだCNT-MEAチップを作製した.作製条件に依存したCNT-MEAチップのDA検出感度測定を電気化学計測法にて行い、その後、ヒトiPSC由来ドーパミン(DA)ニューロンを培養し、DA放出のリアルタイム検出を試みた.開発した微小電極を用いて電気化学計測した結果、酸化電位0.25Vで酸化ピーク電流が観察され、10nM以下の微量のドーパミンの濃度相関が検出された。チップ上にヒトiPSC由来DAニューロンを1か月以上培養し、クロノアンペロメトリー法で自発活動を計測したところ、DA放出をリアルタムに検出することに成功した。CNT-MEA基板の開発により、ヒトiPS細胞由来ニューロンのドーパミン放出をリアルタイムに検出できたことから、ヒトiPS細胞由来ニューロンの神経伝達物質の放出を指標とした神経疾患の解明研究や薬効評価への応用が期待できる.