生体医工学
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高血圧に伴う肥厚メカニズムの解明に向けた動脈壁変形のマルチスケール計測
松本 健郎
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2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S15

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抄録

力学刺激を生化学応答に変えるメカノトランスダクションの機構のひとつとして,組織に加わる負荷が細胞を変形させ,それが核を変形させ,核の変形がクロマチンの配置を変化させ,これによりmRNAへの転写が影響を受けることが考えられている.そこで我々は高血圧に伴う血管壁肥厚メカニズムの解明を目指し,血管組織の変形が細胞,更には核をどのように変形させるのか調べている.まず,正常家兎胸大動脈薄切組織の円周方向引張時の微視的変形を計測し,弾性板は蛇行が解消してから伸び始めること,様々な方向を向いていた平滑筋細胞核が回転して引張方向(円周方向)に揃ってくることなどを確認した.また,細胞核の変形が組織の変形に比べて40-50%程度小さいことを見出した.更に無負荷状態で血管を培養することにより,壁内の平滑筋細胞核が6日後には一旦,細く小さくなった後に9日後には大きく円形に変化した細胞が現れてくること,核内部のクロマチンも核膜付近に集中した状態から,細く小さい細胞では核内に均質に拡がった状態になり,大きく円形に変化した細胞では核内部に凝集塊が現れ,培養細胞類似の形態に変化することなどを見出した.平滑筋細胞核の変形は組織の変形と異なること,細胞核の形態は力学刺激に応じて変化することが示された.

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© 2018 社団法人日本生体医工学会
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