生体医工学
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微細溝コラーゲン基質を用いた血管平滑筋細胞の配列培養組織形成と核のメカノトランスダクション解析
長山 和亮
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2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S17

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抄録

血管平滑筋細胞は力に応答する代表的な細胞であり,高血圧などで過剰な力に曝されると, 細胞の生化学的・力学的特性に変化が生じる.このような細胞の力学応答は血管の疾患発生にも深く関与すると考えられている.近年では,細胞内の細胞骨格の力が核に伝わることで細胞機能が調整されるといった「核のメカノトランスダクション」の可能性が提唱されてきているが,主に平面培養系の細胞が対象とされてきている.このような平面培養環境では,細胞の向きや形状の極性が失われ,増殖・運動性が高い合成型細胞へ脱分化してしまう.一方で,実際の血管組織内では細胞が血管径に沿って一律に配列し,その高い収縮性により血管径を的確に調節している.力に対する血管細胞の応答メカニズムを明らかにする上で,細胞の配列や細胞同士の結合といったin vivoの力学環境を考慮した培養・実験・解析系の構築が欠かすことができない.そこで本研究では,生体由来材料であるコラーゲンのみを用いて微細な溝を持つ基質を形成し,微細溝に沿って細胞を効率良く配向・組織化する手法を確立した.そして,このような細胞の配列・組織化が血管平滑筋機能にどのような影響を与えるのか,核に作用する力の観点から実験的に考察した.

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© 2018 社団法人日本生体医工学会
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