生体医工学
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生体外でのコラーゲン原線維の修復
山本 憲隆前嶋 風輝
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2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S18

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抄録

腱は階層構造をとっており,線維束,線維,原線維の順に細くなり,最終的にコラーゲン分子に至る.損傷した腱が治癒することは良く知られており,治癒過程の解明に関する研究は動物実験などの生体内での実験により盛んに行われてきた.しかし,原線維レベルでの生体外での研究は行われていない.本研究では,ラット尾腱より摘出したコラーゲン原線維の端部をコラーゲン溶液を用いて接続し,その引張試験を行い,原線維の修復について検討した.実験には,ラットの尾腱を用いた.尾腱の線維束を蒸留水と共に試験管に入れ,試験管ミキサーで攪拌した.原線維が分離し,綿状になった試料をスライドガラス上に取り出し展開した.スライドガラス上の2本の原線維の端部を近づけて,この部分に酸抽出I型コラーゲン溶液と再構成用緩衝液をマイクロインジェクターを用いて滴下し,37℃で30分間反応させた.引張試験は倒立顕微鏡のステージ上で,暗視野下で行った.ステージ上に固定したマイクロマニピュレータに取り付けたマイクロ針を用いて,修復した原線維を取り上げ,原線維の両端をマイクロ針に巻きつけた.その後,生理食塩水中で,一方の針は静止させたままで,もう一方の針は原線維が破断するまで移動させた.試験中,原線維はマイクロ針の先端に固定されてすべりが生じることはなく,修復部で破断した.修復された原線維の最大荷重は正常な原線維の最大荷重の約30%であった.

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© 2018 社団法人日本生体医工学会
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