2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S26
変形性関節症の治療法として,骨関節症患者の股関節を人工的に作製された関節で置き換える外科手術である人工股関節形成術が実施されている.しかし,人工股関節には脱臼などの課題が残されている.そこで我々は,人工股関節の脱臼を対象とし,構造的に脱臼を防止する機構に焦点を当てた.関節脱臼を防止する構造において,人工股関節の引抜き力を推定することが重要である.本研究では,脱臼防止機構付き人工股関節に対して,有限要素解析を実施することで,適切な引抜き力となる関節構造を設計する際の指標を得ることを目的とする.提案する人工股関節は,寛骨臼カップが半球線を越えて人工骨頭を包み込む構造によって,脱臼を妨げる引抜き力を得る.人工股関節のCADモデルを作成して,人工骨頭の半球線を越える部分(インセット部)の高さの影響を検討するとともに,引張試験によって得られた実験値と解析値を比較した.インセット部の高さを変化させた解析の結果,インセット部を高くすることで,引抜き力を増加させることが示された.また,実際に引張試験を行った結果と比較した場合,解析によって実験結果を再現することができた.従って,引抜き力を設定するうえで,インセット部の高さが最も注意深く決定すべきパラメータであり,インセット部の高さが引抜き力へ及ぼす影響を加味することで,最適な引抜き力を有する人工股関節の形状を決定することができると推察される.