2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S138_1
血管の狭窄部位を拡張させる治療法として、侵襲性が低くかつ即効性のある薬剤担持型バルーン(drug coated balloon: DCB)を用いた手法がある。既存のDCBは、再狭窄を防ぐ目的でバルーン表面に薬剤を塗布してあるが、再狭窄のリスクは依然として高い (Int. J. Clin. Pract. 65, 664, (2011))。これは、塗布によりバルーン表面に薬剤を搭載しているために薬剤の放出挙動を制御できず、薬剤を患部に的確に送達させることが困難なためである。DCBによる効果的な治療を実現するには、①血流中で漏出せずに患部まで薬剤を運び、②患部でのみ搭載した薬剤を確実に放出するといった機能を併せ持つスマートなシステムを確立する必要がある。そこで我々は、『光』をトリガーとし、狙ったタイミングで的確に薬剤を放出可能なシステムを考案した。本研究では、医療用バルーンの材質であるラテックス粒子表面にモデル薬剤として蛍光分子Cy5を担持させ、光照射によりリリース可能であるかについて検討した。その結果、共焦点顕微鏡観察よりラテックス表面へのCy5の導入、及び光照射した時のみCy5が放出され、さらに共培養した細胞に取り込まれることを示唆する結果が得られた。