2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S75_1
筋に電気刺激を加えると活動電位が生じて筋が収縮することを利用し,運動機能を再建・再現することを目的とした電気刺激を機能的電気刺激(FES)と呼ぶ.我々は表面電極型のFESを用いて,日常動作における使用頻度が高く,ヒトらしさを特徴づける手指を対象にした巧緻動作の制御を目指している.しかし手指は自由度が高いため冗長性が顕著であり,その制御は困難である.本研究では,冗長性問題に対する解を提示している運動制御則のコンセプトに基づいた平衡点制御モデルを用いることで,簡便で直感的なFESによる手指制御を行うことを最終的な目的とする.本モデルでは関節周りに存在する拮抗筋群をまとめて扱うことで,関節の平衡点と剛性を独立に制御可能であること,および非線形性を持つ筋を拮抗状態とすることでその特性を線形近似可能であることの2点を仮定している.我々はこれまでに,FESを入力した際に等尺性条件下で指先に発生する力を出力とした神経筋系の伝達関数が2次遅れ+むだ時間で近似可能であることを報告してきた.今回の報告では,入力をFES,出力を中手指節関節角度とする系の伝達関数が4次遅れ+むだ時間で近似可能であることを示す.