生体医工学
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光電変換色素結合薄膜型人工網膜によって誘起されるrd1マウス摘出変性網膜組織の活動電位スパイク
松尾 俊彦内田 哲也
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 245

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抄録

岡山大学方式人工網膜(OUReP)はポリエチレン薄膜表面に光電変換色素分子を結合した世界初の新方式「色素結合薄膜型」人工網膜である。生物学的安全性評価で毒性はない。岡山大インキュベータのクリーンルーム製造設備で品質管理体制(QMS)下、治験機器を製造している。有効性非臨床試験としては、黄斑変性サル眼に人工網膜を植込み視覚誘発電位の振幅が回復することを示した。さらに網膜変性(rd1)マウスから摘出した変性網膜で人工網膜が活動電位スパイクを誘発するかを検証している。6-8週齢rd1マウス眼球から網膜を摘出し、人工脳脊髄液中で多電極シャーレ(アルファメッド社)中に視細胞側を上に向け神経節細胞側を電極側に向けて静置し、多電極シャーレ底面から、即ち、網膜の神経節細胞側からLED光を照射した。変性網膜のみに光を照射しても活動電位は記録されないことを先ず確認した。次に、対照薄膜として光電変換色素を未結合のポリエチレン薄膜を変性網膜に乗せて光を照射しても活動電位は記録されなかった。続いて、対照薄膜を取り除き替わりに人工網膜を変性網膜に乗せて光を照射すると活動電位が記録された。活動電位は光照射がない場合は記録されず、光照射に応答して生じた。摘出変性網膜を使った非臨床試験でOURePの有効性がさらに確認できた。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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