生体医工学
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他者との注意共有の神経基盤:ハイパースキャニングfMRIを用いた検討
小池 耕彦
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2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 707-709

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抄録

社会神経科学の研究分野は,心の理論と呼ばれる他者の心を類推する能力や社会行動の創発能力がどのような神経基盤に基づいているかを,実験心理学的な手法と脳機能イメジング技術を組み合わせ,あるイベントに相関した個人の脳活動として検討してきた.しかし社会能力の基盤となるコミュニケーションは個人のみではなしえない.自分と同様に情報を処理する他個体が存在し,情報を相互に交換できて初めて,コミュニケーションは成立する.これを考えると,コミュニケーションの神経基盤を解明するには,実際に他者と情報を相互交換している最中の脳活動を検討するべきだという立場の研究が現れた.この考え方の延長線上に,コミュニケーション中の二者の脳活動を同時に記録し,二者間脳活動相関などを指標としてコミュニケーションの神経基盤を明らかにすることを目指す,ハイパースキャニング(Hyperscanning)研究がある.著者らは,二台の機能的磁気共鳴現象画像法(fMRI)装置をオーディオ・ビデオ系で接続することで,コミュニケーション中の脳活動を二者からfMRIで記録する研究をおこなっている.本発表では,著者らがおこなったハイパースキャニング研究について概観することで,どのような仮説に基づいた研究が可能かを伝えたい.

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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