2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 831-833
"【背景・目的】極微弱な生体磁気信号を計測するセンサとして、光ポンピング磁気センサ (Optically pumped magnetometer : OPM) が注目されている。従来、生体磁気計測には、外部の地磁気や環境磁気ノイズを遮断する高額な磁気シールドが必要である。この問題を解決するために近年、OPM をスカラーモードと呼ばれる動作条件で用い、地磁気環境下で生体磁場を計測する試みが行われている。本研究では、アルカリ金属原子の電子スピン偏極の自由誘導減衰 (FID) を利用したスカラーモードOPMの性能について理論的・実験的に評価・検討を行った【方法】実験は磁気シールド内で実施し、シールド内のガラスセルにはRb原子が封入されている。Rb原子はまず円偏光のポンプパルスによってスピン偏極を生じ、その後RFパルスによって90°倒される。ポンプ光方向には地磁気を想定した静磁場がかけられており、倒されたスピン偏極は、自由誘導減衰 (FID) を開始する。このFIDの周波数を検出することで、磁場強度を計測する。計測対象磁場として40 Hzの正弦波を 200 nT, 10 nTの強度で印加し計測を行った。【結果・検討】実験によって90°パルスを用いたスカラー型OPMで磁場強度の計測ができることが実験的に実証された。本研究ではノイズフロアが700 pT程度であったが、今後はグラジオメータ構成による差動計測を行い、生体磁気計測を可能とするさらなる感度の向上を目指す。"