2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 846-848
光ポンピング磁気センサ(OPM)は、極低温状態を維持する必要がある超電導量子干渉素子(SQUID)に比べて低コストでかつ高感度に微小な磁場を計測できる磁気センサとして近年注目されている。通常、OPMは一方向の磁場のみを計測するが、微小磁場のベクトルを計測することができれば、心磁図や脳磁図といった生体磁気計測における信号源推定の精度向上につながる。我々は、OPMを用いた磁場のベクトル計測法として、ポンプ光方向を変化させて取得した信号の大きさの変化から測定磁場の方向を推定する方法を提案した。この手法では計測対象信号の周波数に推定精度が依存せず、通常OPMが計測感度を持たないポンプ光方向の磁場を計測できることが期待される。本研究では、提案した手法の推定精度を、信号周波数、ポンプ光の振り幅、残留磁場の影響について数値シミュレーションによる検証を行った。シミュレーションに用いたパラメータには実際の計測系の設定を用い、磁気信号は生体磁場を想定し、大きさが数pT程度の正弦波とした。その結果、シミュレーション上では実際の実験環境において提案手法は磁場信号の方向を誤差0.1°程度の高精度で推定することが示された。今後は実験によって提案手法の検証を進める予定である。