2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 110_2
発達障害があるとされる子どもの数はこの20年で急激に増加し,現在では発達障害という言葉もすっかり身近なものとなっている。発達障害の特性は多様であり,個人毎の脳の発達の仕方の多様性を反映していると考えられる。社会を持続させる上で多様性が重要であるという考え方に社会全体がシフトしようとしている状況の中,生体計測は発達障害に対してどのようなアプローチを提供できるだろうか。情報技術の発展には,生体計測の精度が向上することにより従来よりも信頼性の高い計測値が得られるようになるという物理的な側面と,生体計測の適用範囲が広がることにより従来よりも制約の少ない環境下での計測値が得られるようになるという社会的な側面がある。ここでは発達障害に対して情報・電子工学分野の技術者である登壇者がこれまでに精神医学や臨床心理学の専門家と進めてきた脳波や顔画像の計測に関するいくつかの研究の取り組みについて紹介し,DX時代における発達障害の診断や治療と生体計測の関わりについて展望する。