生体医工学
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コンピュータシミュレーションによる肺静脈起源心房細動の検討
稲田 慎高山 健志富井 直輝井尻 敬山口 豪芦原 貴司鈴木 亨佐久間 一郎柴田 仁太郎中沢 一雄
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2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 171_2

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抄録

[背景]発作性の心房細動の主な発生起源として,左心房に繋がる肺静脈からの異常興奮がある.臨床では肺静脈をカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)により電気的に隔離する術式がよく行われているが,未だ根治と言えるレベルにまでは至っていない.[目的]心房細動の治療成績向上に向けて,心房内の複雑な興奮伝播をシミュレーションで再現可能な心房モデルを開発することを目的とした.本研究では,構築した心房モデルを用いて,肺静脈からの異常興奮で引き起こされる心房細動について検討した.[方法]3次元CG作成ツールを用いて心房形状のサーフェスモデルを構築した.次に,心筋線維走向を手書きで導入するツール(Takayama et al, J Physiol Sci, 2008)を用いて心房モデルに心筋線維走向を設定した.さらに,サーフェスモデルをボクセルモデルへ変換し,各ボクセルを心筋の構成単位(ユニット)とした.各ユニットにヒト心房筋細胞の活動電位モデル(Courtemanche et al, Am J Physiol, 1998)を組み込み,興奮伝播のシミュレーションを可能とした.洞結節に相当する部位に1,000 ms間隔の刺激を与えて洞調律を再現した後,肺静脈からの異常興奮を想定し,肺静脈へ150〜300 msの間隔で刺激を与え,心房細動の誘発を試みた.[結果]肺静脈からの異常興奮により心房細動が誘発されたが,その誘発率は肺静脈からの異常興奮の間隔と異常興奮の部位に影響された.今後,追加のシミュレーション実験を行い,詳細な解析を進める.

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© 2024 社団法人日本生体医工学会
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