2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 219_2
【目的】重症心原性ショック(CS)患者に対しVA-ECMO(以下ECMO)は非常に有用であるが、その一方左室後負荷増大、肺水腫(ECMO lung)を惹起する。近年、経皮的LVADであるImpellaとの併用療法(ECPELLA)が拡大しその有用性が期待される。ECPELLA循環管理はより複雑である為、コンピュータによる自動制御システムを開発、CS動物モデルで検証した。
【方法】LVADをImpellaの代用としてECMO-LVAD循環を循環平衡理論に基づいてモデル化し、平均血圧(MAP)、左心房圧(PLA)、総血流量[TSF= ECMO 流量 + LVAD 流量+自己心拍出量(CO)]を設定目標値(MAP:70mmHg、PLA:14mmHg、TSF: 120~140ml/kg/min)となるようECMO流量・LVAD流量・心臓血管作動薬投与量をPI制御するコンピュータ自動制御システムを設計した。麻酔下犬連続7例に対し冠動脈塞栓でCSモデルを作成し、その検証を行った。ECMOは大腿動静脈からの送脱血、LVADは開胸により左室心尖部脱血、左頚動脈送血とした。CSに対しECMOを開始しECMO lung状態となることを確認した後、LVADを開始しシステムの自動循環制御性能を検証した。
【結果】CSからECMO導入(流量80±1 ml/kg/min)により有意なMAPの上昇(25±5→70±13mmHg)を認めたが、同時にPLAの著明な上昇(20±4→42±15mmHg)(ECMO lung)を認めた。その後自動制御システムを起動したところ、COに応じてECMOとLVADの流量の最適化、血管作動薬が自動制御され、制御開始40-60分後にはECMO 流量:42±27ml/kg/min、LVAD流量:54±21 ml/kg/minで制御され、CO:29±56ml/kg/minでMAP:72±5mmHg、PLA:13±2mmHg、TSF:125±18mmHgと設定目標値へ良好に自動制御された。
【結論】開発したシステムは循環平衡理論に基づき、遠心ポンプにFrank-Starling曲線の特性を持たせ、PLA及びCOを元に最適なECMO/LVAD流量を制御する事によりサクションを起こすことなく、良好に管理された。今後、ECPELLA循環管理の自動制御への応用が期待される。