生体医工学
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壁せん断応力下の血管平滑筋細胞の形態応答における内皮細胞間との相互作用
沢崎 薫中村 匡徳木村 直行川人 宏次山﨑 雅史藤江 裕道坂元 尚哉
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2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 220_1

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抄録

血管収縮・拡張に重要な血管平滑筋細胞の円周方向配向は,発生過程で内皮細胞との相互作用によって形成される.成熟後の動脈壁においても,内皮細胞は血流による力学刺激に応じて機能を変化させ,平滑筋細胞と相互作用し血管壁の恒常性維持に貢献している.一方で血流変化を伴う多くの心血管疾患で平滑筋細胞の配向の乱れが報告されており,力学刺激による細胞間相互作用変化が関わる可能性もあるが,詳細は不明である.我々はこれまでに,血管壁を模擬した平滑筋細胞を含む圧縮コラーゲン組織上に内皮細胞を播種した共培養モデルに壁せん断応力を負荷し,内皮細胞存在下でのみ組織内の平滑筋細胞が流れ方向に対して垂直に配向する現象を見出した.本研究では,内皮―平滑筋細胞間相互作用による力学環境情報伝達が,平滑筋細胞の垂直配向を引き起こす可能性を検証した.細胞間相互作用や内皮細胞の壁せん断応力に対する応答に関与するNotchシグナル阻害剤DAPTで共培養モデルを24時間処理し,その後2 Paの壁せん断応力を24時間負荷した.その結果,DAPT処理下では圧縮コラーゲン組織上の内皮細胞および組織内の平滑筋細胞のいずれも特定の方向への配向を示さなかった.無処理の共培養モデルでは,内皮細胞は流れ方向に沿って配向した.本研究結果は,壁せん断応力に曝されない平滑筋細胞への力学的環境情報の伝達に,Notchシグナルによる細胞間相互作用が関与する可能性を示唆する.

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© 2024 社団法人日本生体医工学会
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