2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 281_2
心筋に伸展刺激を加えるとNADPH オキシダーゼ2 (NOX2)より活性酸素種(reactive oxygen species: ROS)が産生され、それらは細胞機能制御や病態に関与することが報告されているが、伸展からNOX2活性化までの分子メカニズムは不明である。本研究では伸展刺激に伴うパネキシン1ヘミチャネル(Panx 1)からのATP放出とそれに続くプリン作動性シグナリングが本現象に関与している可能性を検証した。
心筋の伸展誘発性ROS産生増加はPanx1阻害により消失した。また、伸展の代替刺激としてATPを灌流すると、伸展刺激と同等のROS産生増加が観察された。プリン受容体阻害下では、伸展、ATP刺激によるROS産生増加は共に消失した。次に、プリン受容体(P2Y)によるホスホリパーゼC (PLC)の活性化~TRPC3チャネル活性化~TRPC3によるNOX2安定化、の一連の流れが本現象に関わっているかを確認するため、PLC阻害下およびTRPC3欠損マウス、NOX2欠損マウスの心筋細胞を用いて同様の実験を行うといずれの場合でも伸展、ATP刺激によるROS産生増加は見られなかった。これらの結果から心筋への伸展刺激はPanx1からATPを放出し、それらがP2Y受容体を介してTRPC3~NOX2を活性化することでROS産生を増加させることが示唆された。