生体医工学
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水励起近赤外分光強度分布にニューラルネットワークを適用したグルコース濃度推定法の精度評価
朝倉 慎之佑石原 康利
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2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 286_1

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抄録

増え続ける糖尿病患者の負担を減らすため、採血を必要としない非侵襲血糖値計測法の実用化が望まれている。近赤外分光法は非侵襲血糖値計測法への応用が期待されているが、精度・再現性の観点から実用化には至っていない。本研究では、計測光と同時に水を励起するための近赤外光を照射する水励起近赤外分光法により、観測される透過光の強度分布データ数を増やし、さらにニューラルネットワークを適用することで、計測精度に影響を及ぼす水信号を分離し、グルコース濃度推定の向上を図る。先行研究により1%程度のグルコース濃度分解能の推定が可能であることを示したが、血糖値計測に十分な精度ではない。そこで今回、血液の濃度に近い0.10 ~ 0.20%のグルコース水溶液を試料に用いて推定精度の評価を行った。グルコースの吸収スペクトルのピークである1600 nm(計測光)と水の吸収スペクトルのピークである1450 nm(励起光)のレーザ光を光カプラで混合した後、コリメータを介してグルコース水溶液に同時照射した。励起光の強度を変化させてビームプロファイラで計測した透過光の強度分布データを入力、グルコース濃度を出力とするニューラルネットワークを構成し、濃度を推定した。励起光強度を変化させるとともに、透過光の強度分布データに対してニューラルネットワークを用いることが、日常的な血糖値変化を検知する上で有望な手法となり得ることが示唆された。

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© 2024 社団法人日本生体医工学会
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