2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 313_2
心房細動患者は本邦でも100万人以上おり、血栓症予防のために左房内血栓の評価が重要である。現在、経食道心エコーは経口的に実施されるが、患者の苦痛が大きく、操作に高い専門性が要求される。そこで本研究では、バルーンカテーテルと超音波プローブを併用し、操作が容易な経鼻的経食道心エコーを提案する。まずバルーンカテーテルを経鼻的に通過させ、先端のバルーンを水で膨らませて食道に圧着させる。次に、そのカテーテルの内部を通じて、超音波プローブをバルーン内に到達させる。そして、水とバルーンカテーテルを通じて心臓内の血栓を撮像する。この手法は、咽頭への刺激が少なく嘔吐反射が起こりにくい。また、施術も容易であり、看護師などによる実施可能性もある。
提案する手法の実現可能性を検討すべく、以下のような基礎検討実験を行った。まず既存のカテーテルにゴム風船を取り付け、バルーンカテーテルを試作した。次に、シリコーンチューブを用いて食道模型を作成し、水槽内に設置した。この模型の外側には水を張り、水中には撮像体のゴム球を糸で吊り下げた。そして、食道模型の内部にバルーンカテーテルを挿入し、水を封入してバルーンを模型内壁に密着させた。その後、心腔内エコー用超音波カテーテルをバルーン内に設置し、撮像を行った。その結果、超音波撮像に成功した。本成果は、患者負担の少ない新しい心臓内血栓の撮像法の実現可能性を示唆する。