2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 313_1
現在,補助人工心臓(VAD)の小型化が進んだことによって,ポンプ本体の体内への植え込みが可能となり,VADを装着しての社会復帰が可能となった.一方,長期にわたる補助人工心臓の装着は大動脈弁閉鎖不全症の発症リスクを増大させることが報告されている.大動脈弁閉鎖不全症は,長時間大動脈弁の開閉がないことが要因の1つであり,ポンプ出力が高い場合には弁が閉鎖しやすい.また,弁の開閉はポンプの出力だけでなく,血圧などの循環状態の影響も受けることから,補助人工心臓運用中の弁の開閉状態をリアルタイムに把握することは極めて重要である.そこで本研究では,大動脈流量を直接計測せず,ポンプ流量とポンプ後負荷から一拍毎に弁の開閉を推定することを目的とした.
ポンプ後負荷を入力,ポンプ流量を出力とした,再帰型ニューラルネットワークであるLSTMネットワークで構成されたモデルに,弁の開閉がない状態の動特性を学習させた後,モデルの出力誤差を利用してリアルタイムに弁の開閉の有無を推定した.その結果,弁の開閉動作の有無だけでなく弁の開閉タイミングあるいは開放時間も推定できる可能性が示された.また,推定誤差と大動脈流量との間に高い相関があったことから,大動脈流量の変化も推定できる可能性が示唆された.