2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 95_1
線維化とは、組織にコラーゲン等の細胞外マトリックスタンパク質が過剰に産生された状態である。慢性炎症時に誘導される線維化は、組織を硬くすること等により、様々な組織の機能低下をもたらす。従って、線維化の制御は、喫煙等による肺線維症、心筋梗塞後の心臓や慢性腎不全、さらには非アルコール性脂肪性肝炎等、実に様々な慢性疾患において克服すべき重要な課題となっている。
線維化は、筋線維芽細胞という細胞群がコラーゲン等の細胞外マトリックスタンパク質を過剰に産生することにより実行される。この筋線維芽細胞は、主として組織に常在する線維芽細胞が炎症をきっかけに分化する事によって生じる。我々は、筋線維芽細胞の分化状態がメカノシグナルの有無によって自在に制御できることを見出した。そこでこの分化制御法を用いて筋線維芽細胞の分化、線維化能に関する分子を網羅的に探索した。その結果、筋線維芽細胞のコラーゲン産生を促進する分子を見出した。続いてこの分子のノックアウトマウスを作成して各組織における線維化を検討したところ、in vivoでもこの分子が線維化に関与することを見出した。本発表ではこの分子の線維化病態への関与メカニズムについても紹介したい。