抄録
近年、動植物性油脂、廃油を用いたバイオディーゼル燃料の生産が増加するとともに、その副産物である廃グリセロールの処理が問題となっているが、メタン発酵を適用してエネルギーを回収することに関心が高まっている。メタン発酵は多くの微生物が共生した装置内において、有機物を嫌気的に分解し、分解過程で生成する脂肪酸をメタンに還元する典型的な複合微生物の系であり、そのメカニズムの詳細を明らかにすることが長く求められてきた。本研究ではグリセロールを原料としたメタン発酵の操作条件と微生物叢変化の関係を明らかにすることを試みた。グリセロールからはメタンガスが良好に発生したが、このときには、分解中間体である脂肪酸の蓄積が少なく、古細菌の活性が高く維持されることが確かめられた。また、特徴的な古細菌として、Methanobacterium属、およびMethanospirillum属細菌の存在を明らかにすることができた。