土壌の物質循環に関わる線虫は、金属汚染土壌において金属を拡散させる懸念がある。土壌内の線虫は、金属を吸収・吸着した微生物を捕食して遊動し、線虫の死体や排泄物が非汚染土壌へ移動するため、水平拡散の予測が可能である。本研究では、知見の少ない水平拡散について、線虫の生態の観点から評価した。まず、次世代シーケンサーを用いて、2か所の土壌に存在する線虫種の割合を解析した結果、土壌間で線虫種やその存在割合が異なることが明らかとなった。続いて、土壌から単離した5種の線虫種が移動した面積を測定した。その移動面積と存在割合の結果を用いると、2週間(線虫の寿命)で、1つの土は6.32 m、もう片方は7.21 mの距離を、線虫が水平に移動すると推算できた。本研究より、土壌の水平拡散の度合いは線虫種やその存在割合によって違いが生じることが示唆され、線虫の生態の観点から放置された除染対象土壌の面積の推定が可能となった。